株式投資について―安全域という考え方

現在(このコラムは2005年の12月に書いています)、株式投資がブームで、テレビ番組でデイトレードを行う主婦やOLが紹介され、書店には株式投資に関する書籍が溢れています。そこで今回、株式投資に関連したコラムを書きます。

株価は、買いたい人の数と売りたい人の数とのバランスで決まります。買いたい人が増えると株価は上昇し、売りたい人が増えると下降します。買いたい人の数と売りたい人の数は日々変化し、その変化にしたがって株価は常に上下しています。株で利益を得る方法は、突き詰めればただ一つで、株価が低いうちに買い、上昇したところで売り、その差額を得る、というものです。

しかしながら、株価の動きを予測することが困難であることは、経験的によく知られているところです。

株式投資に関しては様々な理論や考え方がありますが、シンプルで私自身が比較的しっくりきたものに、ベンジャミン・グレアムが提唱した「安全域」という概念があります。

安全域とは

資産をすべて売却し、借金をすべて返したとき、最後に残る現金の量を「解散価値」といいます。これはまさに会社の本来の価値であるといえます。また、「株価」と「発行済み株数」との積を「時価総額」といいます。これはいわば会社を丸ごと買うときの値段です。

解散価値が時価総額を上回っているとき、その会社の株は割安であるといいます。グレアムは、大きく値下がりした株価(時価総額)は、長期的には会社の本来の価値(解散価値)に近づくはずだ、と考えました。彼は、解散価値から時価総額を差し引いた値を「安全域」と呼びました。

安全域が十分大きいときが買い時であり、そうでなくなったときが売り時である、というのが、グレアムが発案した株式投資の原則です。これを「安全域の原則」といいます。

ただし、実際に株式投資を行う場合には、一株あたりの利益や自己資本比率など他の要因との兼ね合いもあり、買い時・売り時の判断は複雑になります。

ちなみに、上記の意味で株が割安な会社というのは、企業買収の格好のターゲットになります。理由は明白で、解散価値が時価総額より高いということは、例えるなら、本来2000円の価値ものを1000円だけ支払えば買えるような状態だからです。

解散価値の算出方法ですが、最も簡単なのは、貸借対照表の資本(自己資本)そのものを解散価値とすることです。しかし、会社が公開している貸借対照表に記載されている資産価値は現実のものとかけ離れている場合が多いため、もう少し現実に近い値を解散価値として採用します。

貸借対照表の資産の部に記載されている「流動資産合計」から、負債の部に記載されている「負債合計」を引いたものを解散価値とします。資産には流動資産のほかに固定資産がありますが、固定資産は換金するのが難しいため、除外します。この算出方法はあくまで一例です。実際には、投資家がそれそれ独自に算出方法を工夫しています。

バリュー投資

安全域の原則に基づいた株式投資のことをバリュー投資といいます。株式投資で巨万の富を築いたウォーレン・バフェットも、バリュー投資を実践したといわれています。

バリュー投資について、気になる点がいくつかあります。

一つ目は、解散価値が下がることによって安全域が狭まる、という可能性もあるということです。これは株で利益を得るという立場からするとあまり望ましくない状況といえます。 ただし、解散価値の変動は株価に比べればずっと緩やかで、予測しやすいといえます。

二つ目は、実際に株価が解散価値に近づくにはある程度の期間がかかるので、バリュー投資で成果を出すには、ある程度長期的な運用が必要です。

三つ目は、バリュー投資が大規模に行われると、割安な株が次々と買われてしまうため、株式市場に割安な株が残らなくなってしまいます。

バリュー投資を実践する前に

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バリュー投資には、決算書を読む力が必要不可欠です。決算書って何?という方は、まずは当サイトで発行しているメールマガジン「1回5分で学ぶ!決算書入門の入門」をお読みください。


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